改善・モダナイゼーション

デプロイが属人化したシステムを改善する方法

2026年07月07日
属人化 デプロイ 既存改善 運用改善 CI/CD

「本番へのリリースは、あの人がSSHして手作業でやっている」「手順書はなく、頭の中にしかない」——こうした状態のプロダクトは珍しくありません。デプロイできる人が1人しかいないため、その人が休むとリリースが止まり、リリース自体が怖くて頻度が下がっていく。この記事では、デプロイの属人化がなぜ危険か、そしてどう段階的に解消していくかを整理します。

デプロイ属人化が引き起こす3つのリスク

デプロイが特定の人に依存している状態は、見た目以上に事業リスクです。

  • その人が不在だと出せない: 休暇・退職・体調不良のたびにリリースが止まる。緊急のバグ修正すら出せない事態も起こり得る
  • 手作業ゆえのミス: 「今回だけ手順を1つ飛ばした」「環境変数の設定を忘れた」といった人為ミスが、手順が言語化されていないほど起きやすい
  • リリースが怖くて頻度が下がる: デプロイの負荷が高いと「まとめて一気に出す」方向に倒れ、1回あたりの変更量が増えて障害時の切り分けが難しくなる。悪循環です

さらに厄介なのは、この状態が表面化しにくいことです。担当者がいる間は問題なく回るため、経営やPdM側からは「デプロイに問題がある」とは見えません。その人が抜けて初めて発覚し、そのときにはもう手遅れに近い、というのがよくあるパターンです。

なぜ属人化が起きるのか

多くの場合、悪意や手抜きではなく「初期のスピード優先」が原因です。立ち上げ期に1人のエンジニアが「とりあえず手でデプロイする」仕組みを作り、それが忙しさの中でドキュメント化されないまま定着してしまう。プロダクトが育つにつれてリリース頻度と関係者が増えても、デプロイの仕組みだけが初期のまま取り残されるのです。

これ自体は珍しい経緯ではありません。問題は「気づいた時点でどう手を打つか」です。

改善の道筋:いきなり完璧を目指さない

デプロイの脱属人化は、一足飛びに「フルCI/CD自動化」を目指す必要はありません。むしろ段階を踏むほうが、現場の負荷も低く、失敗しにくくなります。

ステップ1: 手順を言語化する

最初にやるべきは自動化ではなく、今の手順をそのまま書き出すことです。

  • 担当者に張り付いて、実際のデプロイ作業を1回最初から最後まで観察・記録する
  • 「なぜその手順が必要か」(例: この順番でないと接続エラーになる)も可能な限り書き残す
  • 環境変数・認証情報・サーバー情報など、担当者の頭の中にしかない情報を洗い出す

ここで手を抜くと、後の自動化がその人の暗黙知を再現できず、結局「その人にしか直せないスクリプト」に化けてしまいます。言語化は地味ですが、脱属人化の中で最も費用対効果が高い工程です。

ステップ2: 手順をスクリプト化する

言語化した手順を、まずはシンプルなスクリプトに落とし込みます。

  • シェルスクリプトや簡単なタスクランナー(Rake、Makeなど)で、手順の実行順序をコード化する
  • 「担当者の手が完全に不要」でなくてよく、「担当者以外でも実行できる」ことをまず目指す
  • 実行ログが残る形にし、失敗した箇所が後から追えるようにする

この段階で、少なくとも「その人が体調不良でも、手順書とスクリプトがあれば別の人が代打できる」状態には到達できます。

ステップ3: CI/CDパイプラインへ組み込む

スクリプト化ができたら、GitHub ActionsやCircleCIなどのCI/CDパイプラインに統合し、mainブランチへのマージをトリガーに自動デプロイする状態を目指します。

  • テストが通ったコードだけが本番に上がる、というゲートを機械的に強制する
  • デプロイの実行権限が「特定の個人」ではなく「CIパイプライン」に移り、属人性が構造的に消える
  • デプロイのたびに人が判断・操作する箇所を減らし、ヒューマンエラーの余地を減らす

ここまで来ると、リリースは「イベント」ではなく「日常的な作業」に変わり、頻度を上げても事故率は下がる方向に働きます。

ステップ4: ステージング環境とロールバック手段を整える

自動化と並行して、安全網も整備します。

  • 本番と同構成のステージング環境を用意し、本番反映前に動作確認できる状態にする
  • リリースに問題があったとき、即座に1つ前のバージョンへ戻せるロールバック手順(またはコマンド1つで戻せる仕組み)を用意する
  • 何か起きたときの検知手段(エラー監視・アラート)も合わせて整える

ロールバック手段がないままリリース頻度だけ上げると、かえってリスクが増します。「戻せる」という安心感があって初めて、リリース頻度を上げる判断ができます。

外部チームに整備を頼む場合の進め方

社内にインフラ・DevOpsの専任がいない場合、この整備を外部チームに依頼するケースも多くあります。その場合の進め方の目安です。

  1. 現状の手順を一緒に洗い出すところから始める: 外部チームがいきなり手順書もなく着手すると、属人化した知識をうまく引き継げず改善が進みません。担当者へのヒアリングと実作業の観察を最初に行います
  2. 小さく検証してから広げる: 一部の軽微なリリース(例: 静的コンテンツの修正)からスクリプト化・自動化を試し、問題なければ本体機能のデプロイへ広げます
  3. ドキュメントを成果物として必ず残す: 自動化の仕組みだけでなく、「なぜこの構成にしたか」「障害時にどう対応するか」を文書化してもらうことが、次の属人化を防ぎます

デプロイの整備は一度作って終わりではなく、継続的な運用・保守の一部です。保守・運用としてインフラ整備を継続的に支援することも可能ですし、AWSやCI/CDパイプラインの設計・構築はインフラの技術領域として対応しています。

なお、デプロイの属人化は「既存プロダクト改善」の中でも見えにくい課題の一つです。改善の着手前に何を確認すべきかは、既存プロダクトの改善、外部チームが最初に見る観点でも整理しています。また、リリースの怖さが実際の障害頻発につながっているケースは障害が頻発するWebサービスを改善する方法も合わせてご覧ください。

まとめ

  • デプロイが特定の人に属人化していると、不在時にリリースが止まる・手作業でミスが起きる・リリースが怖くて頻度が下がるという悪循環に陥る
  • 改善はいきなり完璧な自動化を目指さず、「手順の言語化→スクリプト化→CI/CD自動化」と段階を踏み、並行してステージング環境とロールバック手段を整えるのが現実的
  • 外部チームに依頼する場合も、現状の手順の洗い出しから始め、小さく検証しながら広げ、ドキュメントを成果物として残してもらうことが次の属人化を防ぐ

「デプロイが特定の人に依存していて不安」「リリースの手順がブラックボックス化している」という段階でも、torcheees はご相談を受け付けています。まずは「既存プロダクト改善」の診断で、現状のデプロイ・インフラ構成を確認し、改善の優先順位と概算費用をご提示します。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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